ONE LOVEへのメッセージ

現在はフリーで、映像制作を行っている飯田基晴さん。ボランティアとして野宿の人々と関わった経験を映画化したドキュメンタリー作品『あしがらさん』の制作を始め、社会の物事を低い目線で見つめていきたいと「group Low Position」を設立された飯田さんが、一人の女性との出会いをきっかけに制作することになった『犬と猫と人間と』は公開前より反響を呼んでいます。作品に込められたメッセージ、率直な想いなどをお聞きしました。
『ONE LOVE』はみんなが持つべき「愛犬家精神」や「愛情」。
1つの愛情が、1つのマナーを生み、1つの共存を生む。
これが『ONE LOVE』の想いです。年間、約10万頭ものイヌが保健所で殺処分されている現代日本。そこで「ONE LOVE」では、プロジェクト第1弾として、「イヌ・ステ・ゼロ」運動をスタートしています。そしてこれからも、単なるペットブームに乗るのではなく、成熟した「イヌとの暮らし」を実現するための情報発信とDonation(寄付活動)を行っていきます。
ONE BRAND(以下、O.B.) 飯田さんが監督された映画『犬と猫と人間と』が今月10日から公開されますが、この映画のテーマを犬や猫にされたきっかけはなにかあったんでしょうか。
飯田 ご自分で捨て猫などを助けてきた稲葉さんという女性が、前作『あしがらさん』の公開中に映画館にいらして、僕に話があるとお声を掛けてくれたんです。上映前から声をかけていただくのは珍しかったし、ご年配の方だったので、なんだろうな?って思ってお話してみると、「これまで自分は数多くの捨てられた猫を保護して、餌あげたり病院連れて行ったりしていたが、年だしもう限界を感じる。自分の蓄えを使って動物の命の大切を訴える映画を作ってほしい。」とご依頼をうけたんです。それが始まりです。最初は半信半疑というかあまり信じられなかったんですよ。そのときは連絡先を交換して別れたんですけど、後日改めてご連絡をいただいた際に、真険な様子が伝わってきたのでもう一度お会いすることにしました。それが映画の冒頭で稲葉さんと僕が話しているシーンです。
O.B. もともと動物愛護に対してご関心がおありだったんですか?
飯田 なかったといっていいですね。多くの方が、捨て犬・捨て猫は保健所に収容されて殺されてしまうんだろうと、漠然とは知っているでしょうが、それがいつ・どんな形で・どれだけの数が、ということって皆さん知らないですよね。僕もそうでした。そういった捨て犬、捨て猫が処分されていく現実に心を痛めている稲葉さんに会うことで、僕も調べ始めたんです。そこで初めて1日あたりにして1000匹以上の犬や猫が処分されている現実を知って……。これはさすがに驚きました。もしこれを人間に置き換えたら、年間30万人以上を毎年殺している、歴史に残る大虐殺ですよね。そういうことが社会の中で日々行われているということは驚きでした。詳細をネットや本で調べ出しましたけど、実際の現場に行ってみないと分からないと感じたので最寄りの動物愛護センターに連絡を取って話を聞きに行きました。
O.B. 依頼を受けて映画を製作するなかで、稲葉さんの想いをお分かりになることは多かったですか?
飯田 この問題がとても大きな問題であるということや、多くの人がもっときちんと知った方がいいだろうとは思いました。ご本人のご依頼としては"動物の命の大切さを伝える映画を作ってほしい"ということでしたが、それって感動ドラマとか色んなやり方があると思うんですね。でもやっぱり僕も捨てられて処分される現実を知って驚きましたし、そこから見えてくる命ということで今回やってみようと思ったんです。
O.B. 映画内では動物保護センターでの撮影の難しさについても触れておられましたよね。
飯田 そうですね。訪ねて行くと職員の方も色々お話はしてくださるんですけど、撮影は難しかったです。これまでテレビなどで収容されている犬や猫の姿が放映されると、市民から「かわいそう、なんでそんなことするんだ」と苦情が殺到するらしいんです。あとはセンターの職員さんの子供さんが学校でいじめられることもあるという話も伺いました。確かに処分を行っているのは施設の職員さんですけれども、ご本人たちの意志でそうしているわけではないですからね。それを担わざるを得ない役割なので、そういった批判はおかしいよなって思いました。ですから撮影に協力するのが難しいという事情も分かるんですが、やはりきちんと伝えていくことで変えていくしかないと思い、いくつかの施設にダメ元であたりながら取材先を探していきました。
O.B. 「しりぬぐいをさせられている」と映画の中でもセンターの職員さんがおっしゃっていましたよね。その辺が映画内でも描かれているので安心しました。
飯田 最近はメディアでの伝え方も随分と変わってきていますよね。しかし保護センターで処分される寸前の犬なんて、どう撮っても本当にかわいそうですから。それだけにインパクトが強いんですよね。職員が悪いわけじゃない、なんてナレーションで語るぐらいではみんなそのインパクトに負けて理解から抜け落ちてしまうのかもしれません。逆にいうと、そういう動物たちの様子に負けないぐらいの、職員の方の想いを撮っていく必要があるだろうなと思って、そういうインタビューはたくさん試しましたね。
O.B. 監督がホームレスなどの社会問題を取り扱っていらっしゃる中で犬の命の問題もその一つだと思いますが、どうしてこんなことになってしまったんだろうと思われますか?
飯田 一言で言うのであれば、私たちが無知であるからだと思います。きちんと現状を知っていけば、変るはずです。何を知らないのか、何を見ないふりをしているのか、なぜ見ようとしないのか。そこには人間の浅はかさ、愚かさなども潜んでいるからなのかもしれません。その辺を考えれば考えるほど深く広い問題だなと思いますね。
O.B. 犬の命について無知というのは保健所についてだったり、処分数について知らないことですか?
飯田 それもあります。あとは動物の命が、例えば流通過程でどういう扱いを受けているかというのもあります。ペットショップというのは子犬がきたら大きくなる前に売らなければいけない。お店によっては買ってくれるならどんな飼い主さんでも構わないと考える。そして安易に飼う人がでてくる。中には最後まで責任を負えずに手放す人もいる。まずそういう仕組みがありますよね。そのことを理解する必要があるとは思うんです。犬や猫がビジネスの中に埋め込まれていることは、合法的になされていることですし、幸せな飼い主もいれば幸せな犬もいるわけですから、一概に否定する気はないんです。ただその中でいろんな矛盾もありますよね。テレビなんかで出てくるのはかわいくて幸せそうな犬と飼い主のわけですよね。犬と暮らせばこれだけ素敵な生活が待っている―でも現実ってそれだけじゃないわけですよ。犬が自分を悩ませることもあるし、そうやって捨てられ、処分される犬もいっぱいいる。そのことも理解したうえで動物を飼う・犬と暮らすということを考える、というのは大切なことじゃないかな。
O.B. 最後にこれから映画を見る方にメッセージをお願いいたします。
飯田 かわいそうな犬や猫の姿などを見たくないっていう方が結構いらっしゃると思うんです。現実を知る、見るということは辛いことですが、そこは映画としてきちんと最後まで観ていただくために、辛い場面のバランスは結構考えてつくっていますし、辛いだけの映画にしたつもりはないんです。捨てられる犬と向き合う子供たちの姿などからは希望も感じて頂けると思うので、怖れずにに気楽に映画を見に来てほしいと思います。
