ONELOVE すべての犬に愛と家族を。

special interview

取材場所は、東京・馬込にあるヤマモトスポーツアカデミー。格闘家である山本“KID”徳郁さんが手掛けるスポーツクラブです。取材チームを出迎えてくれたのは、山本さんの愛犬かっしーくんとキッズクラスの子どもたち。かっしーくんは琉球犬の血が入っているという3歳の保護犬です。「犬が大好き。愛犬とはどこに行くにも一緒」という山本さん。リング上で見せる強く精悍な表情とは一転、愛犬や子供たちと接するときの優しいまなざしが印象的でした。

犬のことは、怒らない、叱らない。
人間だって、叱られるのは嫌でしょう(笑)
それでも、信頼関係は作れます

ONE BRAND(以下、O.B.) 犬が好きだと伺っていますが、子供のころからですか?

山本 初めて動物を飼ったのは文鳥のちーちゃん(笑)。ちーちゃんが死んだときは毎日泣いてたくらい可愛がってて。その後、父親がミニチュアダックスフントを知人に譲ってもらって連れてきてくれました。うれしかったですね。

O.B. 初めてご自身で飼われた犬は?

山本 ピットブル※のソニーです。プロになる前、埼玉にいたころに知人のブリーダーが声をかけてくれて。すでに1歳半でけっこう大きかったんですけどね。ピットブルって体の模様がキレイだとグレードがいいとかあるみたいで、ソニーの場合は、あっちこっちに斑があって模様が汚いって。俺から見たら超コイツ可愛い!って感じなんだけど、模様が汚いから売れ残ったって聞きました。でも、俺のこと待ってたんだなって思った(笑)。
それからはずっと一緒。すごく体力があるから、一緒に走ったりトレーニングしたり、地方合宿に行くときも連れて行きました。小さなジムに5人くらいでギュウギュウに住んでたことがあったんだけど、そこではソニーも一緒にみんなで丸くなって寝たり(笑)。都内もクルマであちこち行きましたね。とにかく、アマチュア時代からプロになって名前が知られるようになるまで、ずっと一緒にいたのがソニーなんです。まさに人生のパートナーという感じでしたね。

O.B. ピットブルは育て方が難しいイメージがありますけど、しつけなどはご自分で?

山本 本を読んだり、自分なりにいろいろ勉強しました。ただ、本を読んでいても自分やソニーに当てはまらない部分もあるので、その都度考えながら少しずつ。ピットブルって獰猛なイメージを持たれてることがあるけど、一緒に暮らしてみると、それは犬種の特性だけじゃない、人間の育て方や接し方も大きく関係してるんじゃないかと思う。ソニーは大人しくて、優しい性格で、怒ることもなかったです。人を咬んだことなんてないし、周りもみんなソニーのことが大好きで。ホントにたくさんの人から可愛がられました。

O.B. かっしーくんとの出会いはいつ頃のことだったんですか。ソニーくんと同じ時期?

山本 体調が弱くなってきたソニーの相棒にと、インターネットで保護犬を探したのが出会いのキッカケです。実はソニーは10歳くらいで肺がんが見つかり、最期はどうしようもなくなって眠らせました。だからソニーとかっしーは、ほんの少しだけ一緒の時間があるんです。

O.B. そもそも保護犬の存在はどうして知られたんでしょうか。

山本 処分される前の犬を引き取って育てている友達がいるんです。それこそ傷ついたピットブルとか、ほかにもいろいろ。その友達の影響もあって自分でも調べるようになって。殺処分の現状とか、犬を取り巻く環境とか、調べるまでは全然知らないことだったので驚きました。
かっしーは里親募集のウェブサイトで見つけたんです。熊みたいに真っ黒でむくむくした子犬で。大きい犬が好きだから、大きくなったらいいなと思って引き取りました。母犬は琉球犬で、父親は不明。でも洋犬の血が入ってそうなんですよね。性格は大人しいっていうかビビリかな(笑)。とにかく、すごいイイやつです。やっぱり、どこに行くにも一緒ですね。そうそう、仕事で大阪に行くことがあるんだけど、新幹線移動だから、かっしーは留守番させてたんですよ。そしたら俺がいない間『いつも一緒に行ってるコンビニの前でずっと待ってる』って、スタッフから連絡があって。いやあもう、電話越しで泣いちゃいました(笑)。それ以来、新幹線でも一緒に移動してます。かっしーが入るでっかいケージを自分でホームまで運んで。でも座席には座れないから、ずっと廊下にいます。ものすごく大変ですよ(笑)

かっしーと触れ合うことで、
保護犬のことを知ってもらえる

O.B. かっしーくんとのやり取りを見ていると、深い信頼関係が結ばれていると感じます。しつけや接し方のコツとかあるんでしょうか?

山本 犬と接するときは人間に置き換えて考えてみたりしますね。それから、犬に怒ったことはありません。それも、自分が怒られるのは嫌いだから(笑)。怒りのエネルギーってものすごく大きいじゃないですか。上から押さえつけたら、その分同じエネルギーで反発される。自分に返ってくるでしょ。反抗して逆効果だったり、人間と同じですよ。例えば、何で落ち着きがないんだろうと考え、安心できる状況を作って誘導するようにしています。それでも怒ってしまいそうなときは、自分の試練と思って堪える(笑)。カッとなる気持ちをグッとこらえて深呼吸。で、犬がいうこと聞いてくれたらすごく嬉しいですよ。

O.B. 犬を怒る状況を作らないってことですね。それにしてもかっしーくん、すっかりジムの人気者ですね。子どもたちにされるがまま(笑)

山本 犬が苦手な子どもが、かっしーと出会って犬が好きになったってことがよくあるんです。お母さんたちのなかにもいるくらい。かっしーと触れ合うことで、自然に保護犬のことを知ってもらえるのは嬉しいですよね。やはり、インフォメーションが大事だと思うから、たくさんの人に知ってもらいたい。犬を迎えるときの選択肢とか、自分なりに伝えていきたいと思っています。

※アメリカン・ピット・ブル・テリア。通称はピットブル。

 

山本“KID”徳郁(やまもときっどのりふみ)

1977年生まれ。神奈川県川崎市出身。ニックネームは“神の子”もしくは“KID”。父・郁栄氏はミュンヘンオリンピックのレスリング日本代表。姉・美憂、妹・聖子もレスリング元王者。2001年にプロデビューし、総合格闘技とK-1では本来より2階級も上の70kgで大活躍。2005年、HERO’Sミドル級トーナメント世界王者に輝く。2008年から自身でスポーツジムYSA(ヤマモトスポーツアカデミー)KRAZY BEEを経営。「格闘技クラス」では自らも指導している。

YSA(YAMAMOTO SPORTS ACADEMY)
http://ysa.jp/