ONELOVE すべての犬に愛と家族を。

special interview

3月11日の東日本大震災とそれに伴う大津波で、甚大な被害を受けた福島第一原子力発電所。現在も発電所の半径20km圏内は放射能による健康被害への懸念から、警戒区域に指定されています。危険な状況にもかかわらず、その中で取材を行い、犬猫のレスキューを続けている山路徹さんと大網直子さんにお話をうかがいました。

ONE BRAND(以下、O.B.) 山路さん、大綱さんは福島第一原子力発電所20キロ圏内に取り残された犬や猫の救出プロジェクトに取り組んでおられるということですが、3月末の活動開始からこれまでに何頭くらいの犬や猫を救出されたのでしょうか?

山路 7月初めの時点で約60頭ですね。20km圏内やその周辺に取り残された犬や猫を救出し、飼い主のもとに返したり、飼い主の方がやむを得ない理由で引き取れない場合や、飼い主が不明の場合は一時預かりをして下さる方を探す活動に取り組んでいます。僕自身も、福島県南相馬で出会った迷い猫を1頭、家に引き取って育てています。名前は「とら」と付けました。あと大網さんが保護していた元捨て猫の「マロ」の2匹と暮らしていますが僕自身、猫を飼うのは30数年ぶり。久しぶりに生き物と暮らす喜びを味わわせてもらっています。

O.B. お二人がこの活動を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

山路 きっかけはツイッターの「つぶやき」でした。僕は大震災直後の被災地で3月13日には取材を開始し、3月16日には福島県の南相馬に入ったのですが、取材中、飼い主に置き去りにされたまま彷徨っている動物たちの姿を多く目にしました。牛や豚などの家畜だけでなく、ペットして飼われていた犬や猫などが、食べ物を求めて歩き回っていたのです。震災から2週間以上たった3月末に訪れた時は、その多くが飢えてガリガリにやせ細り、残念ながら餓死してしまったと思われる遺体も多く目にしました。エサを求めて私たちの車に駆け寄ってきた犬もいて、その子たちには持参していたカップ麺などを与えたのですが、とても足りない。この現状を「どうにかできないものか」とツイッターでつぶやいたのです。

O.B. そのつぶやきに対して、何か反応はありましたか?

山路 すぐに多くの方から「ペットフードを送りたい」という声が寄せられました。もちろん僕の所にそれを送ってもらい、僕が被災地に届ける事もできたのですが、エサを与えるだけではこの問題の根本的な解決にはならないと思いました。動物たちをとにかくあの危険な地域から連れ出さねば、本当の意味で彼らを助けたとは言えないと。そこで、またツイッターで「何とかして動物たちを救出したいが、僕は素人だからどうしていいかわからない。」とつぶやいてみました。すると、すぐさま「すぐに出動できます。ケージもフードも持っていけます!」と手を挙げてくれたのが、ここにいらっしゃる、大網直子さんでした。動物たちのために、危険を顧みず「すぐ行きます」と言ってくれる人がいたこと。僕はこれにすっかり感動してしまい、早速彼女と連絡を取りました。それで、そのわずか5時間後には一緒に被災地に向かって出発したのです。ちょっと信じられない行動力でしょ(笑)?僕はジャーナリストだから、これまで戦場など危険な場所に行った経験があるけれど、家庭の主婦である大網さんがこの決断をされたことには、心から敬意を表しますね。

O.B. 5時間後とは、本当にすごい行動力ですね。大綱さんは放射能汚染が心配される地域に出向くことに、迷いはなかったのですか?

大網 迷いはなかったですね。と、いうより、「早く行かないと」っていう思いが強くて、放射能への恐怖を感じる暇もなかったですね(笑)。普段から、個人で犬や猫の里親探しのボランティア活動をしていましたから、犬や猫の扱いには慣れているし、自宅にケージやフードもたくさんある。だったらあとは私が行けばいいだけだって、すぐに決断できました。
もちろん、放射能への不安がないわけではありません。でも、これまで被災地から保護した犬や猫はみんな、保健所のスクリーニング検査(被ばくの有無を確認するう検査)の結果も問題ないということですから、私自身も『あ、私も大丈夫だ』と秘かに安心していると言うのが正直なところです。

O.B. 現地入りして、最初にどんな印象を受けましたか?

大網 とにかく、頭数が多いことに驚きました。最初に持っていったケージやフードではとても足りなくて…。今後はどのようにしていいのか悩みました。山路さんもトラックが必要だぁーと叫んでたぐらいです。

O.B. 被災地から保護された犬や猫たちは今どこで過ごしているのでしょうか?

大網 飼い主さんご自身が避難生活中で引き取れない場合が多く、基本的には一時的に各地の個人ボランティアさんのお宅で預かって頂いています。もちろん私個人でこんなにたくさんのボランティアを探すのは無理。ボランティア探しを手伝ってくれる人の協力で預け先を見つける事ができているのです。引渡し前に健康状態は必ずチェック。寄生虫が見つかった犬や猫についてはキチンと駆除を行っています。置き去りになっている間にカエルなどを食べて寄生虫にやられてしまう子は意外と多いんですよ。

山路 救出されてきた愛犬や愛猫と再会できた飼い主さんには、すごく喜んでもらいましたね。家族の一員を危険な場所に置いてきてしまったわけですから、気になって仕方がないのに、「人間がこんなに大変な時期に、犬猫のことなんてとても口に出せない」と思いこんで、ペットへの思いを押し殺していたという方が多いんですよ。確かに国難とも言える大惨事の直後ですから、僕たちの活動についても批判的な意見があるかもしれない。でも、僕は動物たちの命を、同じ社会に生きる同じ命として尊重すべきだと思っています。小さな命を粗末にすると、いずれ僕ら人間自身の安全や平和も危うい社会になってしまうような気がします。小さな命を大切にできる社会こそが、人間も安全に平和に暮らせる社会ではないでしょうか。

O.B. 日本では現在年間6万頭以上の犬が殺処分されており、残念ながら決して『小さい命を大切にできる社会』とはいえません。この問題についてどのようにお考えですか?

大網 とても残念です。私も保健所から1つでも多くの命を救いだしたいと願い、活動を続けていますが、正直言ってきりがありません。あんなに多くの命が捨てられ、保健所に持ち込まれ、処分されているなんて、日本は動物愛護に関しては後進国と言われても仕方がないと思います。殺処分そのものを議論する以前に、簡単に犬が売れてしまう、あるいは買えてしまうシステムを変えなくてはなりません。繁華街に夜中でも気軽に犬や猫を買えるお店があるなんて、そういうことが許されていること自体、おかしいのです。あのマルコ・ブルーノさんも、この現状を見て「日本には蛇口がないのか?蛇口を止めなくてはいくらバケツを持ってきても意味がないのに。」と批判されています。

山路 今回の大震災で、日本の社会システムの未熟さが浮き彫りになりました。避難地域に残された動物たちへの行政対応の遅さを見ても、その未熟さは明らかでしょう。今後、私たちは復興していく過程でもう一度、社会システムの在り方を見直していく必要があります。私は今後もジャーナリストとして事実を伝え、さまざまな問題を世に問うていきたいと思っています。

山路徹(やまじとおる)・大網直子(おおあみなおこ)

「ゴン太ごめんね、もう大丈夫だよ! 福島第一原発半径20キロ圏内犬猫救出記」(光文社) 山路徹と救出チーム編
http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/ 9784334976552
福島原発20キロ圏内・犬猫救出プロジェクト
http://dogcatrescueproject.blogspot.com/


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