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special interview

ドッグジャーナリストとして新聞や雑誌で記事を書く一方、犬の社会化を目的にした通園スタイルのしつけ教室「犬の幼稚園 Urban Paws」を主宰し、ペットドッグしつけインストラクターとしても活躍中の臼井京音さん。今回は愛犬のノーリッチ・テリア、リンリンの出産を通して臼井さんが感じた犬の命の尊さについて語っていただきました。

ONE BRAND(以下、O.B.) 2007年から始められた「犬の幼稚園」とはどんなところですか?

臼井 生後2〜5ヵ月くらいまでの子犬の「社会化期」に、子犬同士の遊びをとおしてしか学べない犬社会のルールなどを学ぶ場所です。「社会化」を行っておけば、成犬になってからの困った行動も予防できて飼いやすい犬になるんです。そうすれば飼い主さんも「とてもこの犬とは一緒には暮らせない…」と頭を抱えずに済むでしょう。社会化をバッチリすれば犬見知りや人見知りをしない犬になるので、どこへ連れて行っても安心です。人と犬の共生社会の実現にも、卒園したコたちが一役買ってくれると信じています。

O.B. ドッグジャーナリストとしつけインストラクターと二足の草鞋でご活躍ですよね。

臼井 世界20カ国を取材する中で、とくにドイツやフランスなど、人と犬が心地よく共生している社会を見てすばらしいと感じました。一方、家族の一員として犬と暮らし始めた歴史が浅い日本には、犬の心理を理解しない誤った接し方をされているために、飼い主と信頼関係が築けていない犬が多いなぁ・・・と。そこで、家庭犬のしつけを学びたいと思い、動物愛護先進国のオーストラリアへ渡りました。

O.B. リンリンと暮らすようになったのは、帰国後ですか?

臼井 いえ、オーストラリア滞在中です。『オズの魔法使い』に登場するトトとそっくりの、憧れの犬種だったノーリッチ・テリアのブリーダーさんを見つけたので。その犬舎では、一番「テリア気質」たっぷりの気が強そうな子犬を選んできたんですよ。このコをきちんとしつけられれば、自信が付くと思って(笑)。ちなみにトトはケアーン・テリアなんですけど。もうひとつちなみに、日本と違ってオーストラリアでは断耳・断尾は州法で禁じられているので、リンリンのシッポは長いんですよ。

O.B. 「テリア気質」とはどういうものですか?

臼井 テリアは身体は小さいですが、愛玩犬ではありません。もとは、ネズミやアナグマやキツネなどの害獣駆除を行うために作出された犬種です。単独で行動できる自立心と、獲物の命を絶つまで追い詰める強い性質が、仕事を行う上で必須なんです。強いリーダーシップを発揮できる心身ともにタフな飼い主でなければ、一緒に楽しく心穏やかに暮らしていくのはむずかしいですね。

O.B. 見た目で犬種を選ぶとあとで苦労することになるんですね。

臼井 本当にそうですね。最近はニューヨークで人気がある柴犬なんかも、イノシシとも闘える強さを持つ猟犬でしつけは大変です。飼い主さんの性格とライフスタイルに合った犬種選びをすることも、いずれ捨てられるかもしれない犬を減らす第一歩になると思います。

O.B. 犬を飼う前に、きちんと調べることが大切なんですね。さて、そんなリンリンがこの度お母さんになったと聞きました。

臼井 はい。でも実は安易な素人繁殖は反対なんです。捨てられた犬がこんなに多くいるのに、わざわざ新しい命を素人が作り出さなくても…と。オーストラリアではアニマル・シェルターを取材したり、そこから新しい犬を迎えた飼い主さんたちに多く出会いました。私もいずれは成犬を保護施設から迎えたいと思っています。また、日本ではブリーディングによる遺伝病のコントロールが欧米ほど進んでいませんから、十分な知識がない素人繁殖によって遺伝病が減らせない現状も問題だと感じています。ではどうしてリンリンに産ませたかというと、犬のジャーナリストとしつけインストラクターとして、犬の命がどのように産まれて成長し、どのように母親がしつけていくのかをこの目で見て知りたかったからです。

O.B. なるほど、実際に経験をしたからこそ伝えられることがあるでしょうからね。そうして出産に臨まれたわけですが・・・。

臼井 動物病院で健康診断をして、遺伝病と感染症の有無を調べてから、信頼できるブリーダーさんに交配を依頼しました。犬は安産だと言われているんですけど、人間が改良を重ねた結果、自然分娩が出来なくなっている犬種もいるんです。リンリンも1頭しか妊娠していかなかったので、安産ではありませんでした。陣痛が始まって破水しても胎児がいっこうに出てくる気配がなくて、あわててブリーダーさんに電話したところ、破水して12時間以内に出産できないとお腹の中で胎児が命を落とすこともあるから早く獣医さんに診せるようにと言われて。かかりつけの動物病院で、陣痛促進剤を打って1時間ほど頑張っていきんだものの産まれず・・・。産道の広がりが足りないという判断で、帝王切開することになりました。麻酔を打たれて手術台の上でお腹を開かれるのを見たときは、ごめんねリンリン、こんなつらい思いをさせて…と交配させたことを後悔したりもしたんです。胸が痛くて涙が出ました。そして、獣医さんが深夜1時ごろ取り出した仮死状態の赤ちゃんを、私はタオルで必死でこすって蘇生させたんです。でもなかなか息をし始めなくて、先生が赤ちゃんを両手で包んで上下に振って血流を促したり、人工呼吸のようにして息をふっと吐き入れたりしても舌は紫で元気がなくて…。リンリン母さんも頑張ってるから赤ちゃんも息をしてって、祈りながらタオルでこすること30分、ようやくスーッと息をしてくれました。今度は感動してウルウルきましたね(笑)。よかった、よかった、本当によかったって。産声を上げるまでは安心できないということで、結局1時間くらいずっと子犬をこすり続けました。最後にようやく、ミーッって産声を上げてくれて。その声が忘れられなくて、ミィミィと名付けました。

O.B. 自然分娩とは違って、人間が様々に手を貸して生まれてきた命なんですね。

臼井 本当に、ひとつの犬の命が産まれてくるまでは、想像以上に大変でした。今回の経験をとおして、改めて命の重みを実感しています。

O.B. 日々成長するミィミィと母犬リンリンを見ていて感じることはありますか?

臼井 産まれたときは192gしかなかったミィミィも、生後1ヵ月で4倍の800gになりました。最近ようやく目が見えるようになったんですよ。それまでは、リンリンのおっぱいばかり匂いで追いかけていましたね。離乳はまだですが、目が見えてからはリンリンとよくじゃれあっています。楽しく遊びながらも、噛む加減なんかを母犬からしっかり教育されている姿を見ていると、日本でもドイツの動物保護法のように「生後2カ月までは親きょうだいから離してはならない」とされるべきだと強く感じます。親犬から早く離されると、不安が強い性格が形成されたり、手加減せずにかみ付く傾向が強くなるといった研究結果があるからです。そうなったら、飼い主さんからどんなに愛情を注がれても犬はしあわせとはいえません。犬の一生を左右する子犬期の環境づくりの大切さを、実感しています。こうして、そもそも人との強いつながりのなかで誕生する犬の命は、しあわせになるもならないも、やはり人の手にかかっているといえるでしょう。犬の命を作り出し、守っていく責任は重いと感じますね。

臼井京音(うすいきょうね)

『Urban Paws』
http://www.urbanpaws.jp/


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