ONELOVE すべての犬に愛と家族を。

special interview

東京農業大学農学部バイオセラピー学科の講師であり、「人と犬との共生」プログラムを提供している日本ドッグオーナーズアカデミーのエグゼクティブアドバイザーでもある増田宏司先生は、日本では数少ない動物行動学の専門家です。日々多くの犬の飼い主さんや学生と接する増田先生からの獣医学博士・獣医師としてのメッセージです。

ONE BRAND(以下、O.B.) 増田先生は動物の行動学を研究しておられるのですよね?

増田 最初は「犬そのもの」の研究をしていましたが、途中から「犬」とは切り離すことが出来ない「飼い主」も含めて研究しています。その中でも特に注目しているのはペットの環境設定です。例えばペット向け、ペット可の施設は、動物行動学的観点からすると、どれも頑張りすぎているんです。例えば、日本の家庭でペットを飼う場合に揃えられているものが、ペット向け、ペット可の施設では人間の目から見ると豪華に、犬の目から見ると全く異質のものになっていて、そういう場所に犬が行くと、まったく落ち着けないんです。施設はお客様重視ですから非現実的な夢の世界を作ることもサービスですが、本当の意味で犬のための工夫がなされていないことが多いんですよ。

O.B. 慣れない環境だから犬は戸惑ってしまうというのは、逆行してしまいますね。

増田 私がアドバイスするのは、アッシュキューブ(hの3乗)という考え方で、「外す」、「剥がす」、「減らす」ということなんです。それを基本にペットと飼い主の環境を考えてくださいとお願いしています。例えばホテルだと毛足の長い豪勢な絨毯が敷かれていますよね。そういう絨毯は人間のお客様へのサービスですからやめることは出来なくても、犬のケージの周りだけは剥がしてくださいと。また、良かれと判断されてか日の当たる広々とした場所にケージがあったりするんです。それを外してください、部屋の隅に置いてくださいと。さらに、宿泊施設は飼い主の気持ちも大事にしなくてはなりません。例えば粗相した時の為のタオルがあちらこちらに山積みになっていたりするんですが、お客さんが夢の世界から現実に引き戻されないように、減らすか、適度に置き場所を分散させてくださいと。タオルの置き場所が少なくても、必要があればその都度補充すれば良いことですから。ホテルのサービスには反する点もあるかもしれませんが、それくらいのことは犬の飼い主であれば理解してくれると思うんです。なぜなら犬にとって一番ストレスの少ない環境を作るためですから。

O.B. 一般の飼い主さんにアドバイスなどありますか?

増田 自分の犬を他人に紹介するときに、私の愛犬です、と紹介できる気持ちが大切なんです。日本人だと、うちの子、という風になりがちですよね。自分の犬を愛犬と呼ぶのは照れるというか、恥ずかしい感もあるのでしょうが、そんなに難しいことじゃないですよね?そういう根本から変えていくことが大切だと思っています。同じように本やネットで犬について勉強する飼い主さんも増えていますが、その情熱こそ自分の愛犬に向けてください、と私はいつも言っています。

O.B. 情熱を愛犬に向けるというと?

増田 犬を誉めるタイミングがありますよね。多くの飼い主さんは、自分が出した指示に従った時に誉めるんですが、僕がオススメしているのは普通にそこに居るだけで誉めてあげてくださいということなんです。今の飼い主さんは犬に多くを望みすぎているんですよ。私たちの邪魔にならないように傍にいてくれていることを誉められるようになることが大切なんです。そうなるとオスワリが出来た時には、興奮させすぎない程度にスーパー・スペシャルに誉める、それで良いんです。

O.B. 犬が人間の環境に合わせて、かつリラックスしているということは・・・確かに誉めるに値しますね。

増田 周りの人も、どんどん他の飼い主さんを誉めてあげて欲しいんです。あなたの作った環境の中で、あなたの愛犬が落ち着いているということは、あなたは素晴らしい飼い主だよと。それが上手くできない飼い主さんの多くは、「うちの犬は言うことを聞かない」とおっしゃるのですが、それは違いますよと私は言うんです。今はあなたの言うことを聞きたくないだけなんですよと。そう考えると実はトレーニングなんて簡単なんです。飼い主が意識を変え、愛犬に注目される人になれば良いんですから。このような時、飼い主さんのちょっとした工夫で愛犬との関係が変わることを飼い主の皆さんに伝えたいという想いから日本ドッグオーナーズアカデミーと共にファミリードッグアドバイザーという認定資格を作ったのです。

O.B. 飼い主の意識を変えることは、ONE LOVEにとっても最も大きな課題だと考えています。

増田 犬の殺処分は基本的には人の問題ですね。だからこそ、具体的に私を含め、一人ひとりが出来ること、自分にしか出来ないことを考えることで、この問題は解決すると思っています。私の場合は毎年数百名の学生たち、つまり未来の犬の飼い主に授業という形で話をしていますから、そこで彼らに訴えかけています。ただし、初回の授業で「犬を捨ててはいけませんよ」と言っても意味が無いんです。彼らは卒業までにはそんなこと忘れちゃいますから。それに犬を捨てることはいけないことぐらい、みんなとっくに分かっているわけです。万が一、何が悪いの?と思う人に「捨てちゃダメだ」と言っても、なかなか聞き入れてもらえませんよね。だから気をつけているのは、信頼関係を作ることなんです。この人は真剣で熱い人だと理解してもらった段階で話をしないと、授業ですら聞いてもらえませんから。そうなって初めて話をするんです。まずは初めて自分の家に犬が来た日のことを思い出してもらいます。その次に自分の犬が死ぬときのことを想像してもらう。そうすると、6割の学生は泣いてしまいます。それくらいして初めて、この学生たちは自分の犬を愛犬といい、絶対捨てないようになるんだと思います。

O.B. 相手が自分で気付くことが重要なんですね。では最後に、増田先生からメッセージをお願いします。

増田 いつもより5%だけ考えなさい、それが出来たら、いつもより5%だけ勇気を持ちなさい、と学生には話しています。5%の理由は、それくらいなら犬のために出来ると思いますよね。最初から100%と言われると無理だと思ってしまいますけれど、5%ならって。でも5%が20人集まれば1人分ですから。みんなが5%意識すれば、大きく変えることが出来るはすです。

増田宏司(まずだひろし)

日本ドッグオーナーズアカデミー
http://www.jdoa.jp/