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special interview

いのちの絵本『Wauschwitz ワウシュヴィッツ』は、出版直後から様々なメディアに取り上げられるなど注目を集めています。この本を書かれた作家の吉川愛歩さんは、ご自身のお子さんに犬たちが置かれた現状を伝えるためにと、この本を書き上げられました。子供の頃の体験から、自分に出来ることをはじめることの重要性についても語っていただきました。

ONE BRAND(以下、O.B.) 『Wauschwitz ワウシュヴィツ』読ませていただきました。この本を書くきっかけは吉川さんの子供時代の体験だったそうですね?

吉川 そうです。私が8歳の時に、父が当時人気だったシベリアンハスキーの仔犬を買ってきたんです。私は見慣れない顔をした犬に驚いたのを覚えています。それまで家にいた2匹のヨークシャテリアとは全然違う顔だったので。それから間もなく家の1階がペットショップになったんです。その後は繁殖用にドンドン犬が増えていって、普通の一軒家に小型犬やらハスキーやらが30〜40頭はいたと思います。毎日スタッフが近所の公園にハスキーを散歩に連れて行くので、その公園はハスキーだらけになっていました。

O.B. 生まれた仔犬たちが病気になったり、死んでいく姿を目の当たりにした吉川さんにとって、犬たちの現状について書くことは辛いことだったのではないですか?

吉川 そうですね。本当に思い出したくないことばかりだったので、実は書こうと決めたあと、途中で何度もやめました。私自身、そうやって犬を売り買いしたお金で育ってきたわけですし、その過去を否定することにならないだろうか? と、自分の中で矛盾をずっと抱えていたんです。でもそんななかで娘が生まれ、「この子に伝えていきたいことって何だろう」と考えた時、やっぱり犬のことは書かなければいけないと思ったんです。

O.B. 犬との楽しい思い出もお持ちかと思いますが、殺処分の問題にフォーカスしたのは?

吉川 友達と話していた時に、「このあいだペットショップで仔犬を買ったんだ」という話を聞いたんです。その時に思ったんです。友だちにとってみれば、お店で売っているものをお金で買うという、当たり前のことをしただけなんですが、「引き取るとかブリーダーさんから譲ってもらうこともできるんだよ」と私が伝えていれば、もしかしたらそういう方法も考えてくれたんじゃないか、と。そういう犬がいるという事実を知らない人がたくさんいるのだ、ということを知って、『Wauschwitz ワウシュヴィッツ』では殺処分をテーマに制作しました。

O.B. お金で買ったのだから、不要になれば捨てるというのは自然なのかもしれませんね。

吉川 せめて犬を買ったり売ったりするときに、犬とはどういう生き物なのか、この犬種はどういう性質を持っているのかを、売る側はきちんと伝えて、飼う側はきちんと聞いてほしいと思うんです。犬の飼い方についての本を一冊は読み、飼おうか悩んでいる犬に何度も会いに行き、その犬が自分の家に来たらどんなことが起こるかを書き出してみる。植木鉢を倒すかもしれないし、カーペットにおしっこするかもしれない。そうなったときどうするべきか考える。充分に考えたうえで犬を迎え入れる。そうしておけば、犬が言うことを聞かないから捨てる、なんてことは起こらないですよね。

O.B. ミスマッチが無ければ、不幸な犬を減らすことが出来るのではないかと、私たちも思います。

吉川 ニュースで、仔犬が生まれちゃったから保健所に連れて行くという人のあっけらかんとした様子を見ると、逆に私が異常なのかも、犬に構い過ぎているのかな、と考えてしまうこともありますが。

O.B. 違法なことではないですからね。保健所への持込は・・・だけどそれって命ですよねって・・・。

吉川 あるホームページに、どうしても犬が飼えなくなったのなら動物病院に連れて行って安楽死させてください、と書いてあったんです。私はビックリしたんですよ、病気でもなんでもないのに、命の終わりを人間が決めるなんて、そんなことがあっていいんだろうか、と。でも百歩譲って考えれば、保健所に連れて行くよりはまだマシだと言えるのかもしれません。殺してまで飼うことをやめる理由って、一体どんな理由なんでしょうね……。

O.B. 犬にとってはせめて飼い主さんの腕に抱かれて最期を迎えることが出来ますし、飼い主さんにとっては犬の命の重みを感じながら見守るべきだということなんでしょうね。
吉川さんはこの本を書かれる以前から殺処分の問題には関心をお持ちでしたか?

吉川 関心はありましたけれど、大人になってからは保健所に行ったことも無いですし、子どもの頃にいろいろ知ってしまったおかげで、こういう問題にはできるだけ関わらないようにしてきました。だから保健所で何が行われているのか知識としては知っていても、見たくないし知りたくない、と思ってきました。わたしもこの本を出して、犬好きな友だちに「吉川さんの本だから一応買ったんだけど、なかなか読む勇気がでない」と言われましたよ。本当はみんな、見たくないですよね。悲しいことだから。

O.B. そういう方は多いと思います。

吉川 それに殺処分の問題に向き合うということは、里親になるとか、団体を作って保健所から犬を引き出すことなんだ、と思っていた節もあります。なにか大きな活動をしなければいけない気がして。でも結局、こういうのは偽善では続かない、と思ったんです。できないことを無理にするんじゃなくて、自分の生活のなかでできることを探していく。だからわたしはまず書いて伝えることをする。あとこのごろよく思うのは、隣近所に関心を持つというのも、こういう問題に取り組むことにつながるんじゃないかなあ、と。いつも野良猫にエサをあげているおばさんのことや、よく公園を散歩している太りすぎた犬のこと……。声をかけてみたら、なにかが変わるかもしれないですよね。

O.B. 絵本を通じて子供たちが犬の命について考えたり、殺処分について知ることで、将来大人になった時には犬を捨てない人になってくれたらと思います。

吉川 万が一、大人が捨てようとしても、子供が止めてくれたらいいなと思っています。
ただ、よくお問い合わせをいただくのですが、この本にはフリガナを振っていません。理由のひとつは、基本的には大人の人を対象にしているからです。犬を飼うのも捨てるのも、こどもがひとりでできるこではないですし。そしてもうひとつは、子供がひとりで読むのではなく、できれば大人と一緒に読んでコミュニケーションをとってもらいたいからなんです。大人がきちんと説明し、子どもに伝えてほしいんです。

O.B. 今後も犬に関わるテーマで作品を書かれる予定はありますか?

吉川 いつになるかわかりませんが、私の体験を基にした小説を書こうと思っています。結構いやな内容になると思いますけれど、いつかしっかり書きたいな、と。

O.B. 自分に出来る分野の中でということですね。私たちに出来ることは情報を広めることだと思うので、まずは沢山の大人にこの本を読んで貰えるように頑張ります。今日はありがとうございました。

吉川愛歩(よしかわあゆみ)