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special interview

飼い主による飼育放棄やブリーダー崩壊など、さまざまな理由で動物愛護センターへ連れてこられる犬たちに新しい家族を見つける活動をしている"成犬譲渡ボランティア"が体験した実話をまんがにした「わんこのきもち」が人気を博し、これまでに3冊の単行本となっています。今回は原案者であり主人公の石田るかさん(仮名)、動物愛護センターの行政官としてまんがにも登場している三木内和也さん(仮名)と漫画家の樋口きしこさんのまんが「わんこのきもち」製作メンバーにお話を伺いました。

ONE BRAND(以下、O.B.) 成犬譲渡ボランティアをしている石田さんの実体験を漫画化した、人気シリーズの第3弾「わんこのきもち〜成犬ボランティアが見た、涙と絆の物語」(ぶんか社)が好評だそうですね。そもそも漫画化のきっかけは何だったのですか?

石田 私の所属している成犬譲渡ボランティア団体に、ぶんか社の方が関心を持ち、問い合わせて下さったのがきっかけです。私たちはかれこれ20年以上も、ボランティア活動をしていますので、出会った犬たちとの思い出や忘れられないエピソードがたくさんあって…。それらを樋口きしこ先生が読みやすい漫画にしてくださり、ぶんか社さんの漫画雑誌に連載されることになりました。単行本化は今回が3回目ですが、より多くの方に保護犬の存在や成犬譲渡ボランティアの実情、動物愛護センターの役割などについて知っていただきたいと願っています。

O.B. 三木内さんは動物愛護センターの行政官。殺処分される前にセンターから犬を引き出して譲渡先をみつける活動をしている石田さんとは、一見、相反する立場にいるような印象を持つ方も多いのではないでしょうか?

三木内 それは全くの誤解です。本来の動物愛護センターの役割は文字通り動物を愛し、護る活動を推進すること。一頭でも多くの動物に幸せになって欲しいという、石田さんたちの願いと同じなんです。私がこの漫画制作に協力させていただこうと思った理由の一つは、この点を皆さんに正しく理解してもらいたかったからなんですよ。
動物愛護ボランティアと一口に言っても、実は団体ごとに主義主張や保護についての考え方は千差万別。私もいろいろな団体と接してきましたが、石田さんたちの団体は活動期間が長く、とても冷静かつ真摯な姿勢で取り組んでおられる点が際立っています。行政官としてだけでなく、動物を愛する一個人としても、石田さんの会の活動には共感しています。

O.B. 漫画の内容はすべて石田さんたちの実体験に基づいているそうですね。本当にひどい状況で生きる犬たちの様子に心が痛みます。

石田 飼い主に虐待され、近所の人の通報で保護された犬、「子どもに犬が死ぬところを見せたくないから」という理由で死ぬ寸前に、飼い主自身の手で保健所に持ち込まれた犬。悪質なブリーダーによって放棄された犬など、今回の単行本にも様々なエピソードが登場しますが、悲しいことに全て実話です。私たちが活動を通じて出会う犬には、どの子にも悲しいドラマがありますね。これまで500頭以上の犬たちと接した経験から断言できるのは、犬たちはみんな生きることに真摯に向き合っているということ。どんなに残酷で辛い状況におかれても、自殺する犬はいません。みな、健気に必死に生きようとします。それを踏みにじるのが、一部の心ない人間なのです。

三木内 私もセンターの業務を通じていろいろな動物やその飼い主さんと接しますが、全く同じように感じますね。動物は言葉が話せませんし、飼い主を自分で選ぶこともできません。センターに持ち込まれる動物は、ごく稀な例外を除いて、良い飼い主に恵まれていません。中には便利屋を雇って、猫40匹をセンターに持ち込ませた飼い主もいるんですよ。本当にひどいですよね。だからこそ、石田さんも私も、殺処分を免れてセンターから引き出された動物たちには「次は私たちが君に変わって、良い飼い主を探してあげよう」という気持ちで、より良い譲渡先を探す努力をしているのです。

O.B. 漫画を担当している樋口さんは、こういったエピソードをどのように受け止め、作品に反映しているのでしょうか?

樋口 最初の打ち合わせで石田さんのお話を聞いた時は、本当にショックでした。もちろん、センターに持ち込まれて処分されてしまう犬や猫がいることは知っていました。でも、センターに動物を持ち込むのは、一部の悪質なブリーダーが大部分だと思っていたのです。でも実際には、一般的な飼い主の中にも「飽きたから」「医療費が払えないから」「旅行に連れていけないから」というような信じがたい理由で動物を飼育放棄したり、虐待したりする人がいることを知って、本当に驚き悲しい気持ちになりました。センターに勤務されている三木谷さんのお話も目からうろこ、の連続…。
お二人の話を聞いているうちに、「この漫画はいわゆる“感動モノ”で終わらせてはいけない」って思うようになったんです。一般的に動物を扱う漫画は、読み手の感動を誘う心温まるストーリーに仕立てるのが常ですが、今回はそれだけで終わらせてはならないって思うようになりました。しっかり現実を伝える漫画を描くことで、読者の皆さんに動物愛護について考えてもらうのが、私の役割だと気づいたんですね。
目をそらしたくなるような辛いエピソードやハッピーエンドではないエピソードを敢えて取り上げているのは、皆さんにこの現状を正しく知って欲しいから。そして、社会問題として皆さんに問題提起できるような作品にしたいからです。
お蔭さまで連載スタート以来、多くの読者の皆さんから反響があり、すごく手ごたえを感じています!

石田 私も、この漫画を読んで下さる方に感動して欲しいとは思っていません。私たちボランティアのやっていることを「えらいね、立派だね」と思って欲しいわけでもありません。樋口先生と同じく、この厳しい現実を知って欲しい、この悲しい状況を作ったのは紛れもない人間であることを知って欲しいと思います。
また、もう一つ、皆さんにぜひ知ってほしいのは、日本の動物愛護団体の現状です。日本には現在、実にたくさんの動物愛護団体があり、各自がそれぞれの信念に基づいて活動をしています。しかし、残念なことに全ての団体が、適正な活動をしているとは言えないのが現状なのです。中にはセンターから引き出してきた犬や猫を不適切な環境で飼育したり、皆さんから寄せられた寄付金を不正に使用したりするケースもあるようです。
中でも私が特に問題視しているのは、「センターから引き出すこと」自体を活動の目的としていて、どんどん犬を引き出してくる団体の存在です。そういった団体は「命が助かれば良い」という考え方なので、譲渡先の確認(飼い主として適切な人物か否か・飼育環境が適切か否かの確認)が手薄になっているケースが多々あります。これでは、せっかく助かった犬や猫が以前と同じ、もしくはさらにひどい環境に陥ってしまわないとも限りません。
もし皆さんが寄付を行う際や、犬や猫の譲渡を希望する場合は、その団体が日常的にどのような活動をしているかを正しく見極めてほしいと思います。

O.B. とはいえ、近年、動物団体や行政の努力が実って、犬や猫の殺処分数が大幅に減少してきたことは、喜ばしいですね。

石田 そうですね。目覚ましい進歩だと思います。譲渡活動が社会に浸透し、少しずつではありますが、保護犬・猫を飼うという文化が、日本でも定着しつつあるように感じています。でもいくらバケツがたくさんあっても、蛇口が閉まっていないと、いつかまた水がこぼれ出してしまう。つまり、保護犬・猫の受け入れ先をたくさん確保できたとしても、保護犬・猫そのものを生まない社会を作っていかないと、問題の根本的な解決にはならないと思うのです。
そのために必要なのは、なんといっても教育の力ではないでしょうか?子供のころから、動物と触れ合う機会を与え、動物を愛する心を育むこと。同時に正しい動物の飼い方、動物との接し方をちゃんと教えて行く必要があります。

三木内 教育といえば、最近とても嬉しい出来事があったんですよ。公園でうちの犬たちを散歩させていたら、小学校高学年の女の子が近寄って来たんです。普通なら、ここでいきなり犬をなでたり触ったりする子が多いのですが、この子はちゃんと「触ってもいいですか?なんて言う名前ですか?」って静かに私に尋ねることができたのです。これこそ、私がこの20年間、小中学校での出前授業やセンターの愛犬イベントで、子どもたちに伝え続けてきた「犬と接する時のマナー」です。このマナーを守れば、突然触られた犬が驚いて噛みついたり、逃げ出したりする事態を避けられるんですね。「ああ、20年かかったけど、教育の成果は少しずつ上がっているんだなあ」って、すごく嬉しくなりました。

石田 すばらしいですね。確かに動物愛護の問題はとても複雑で根が深く、一朝一夕に解決できるようなものではありませんが、続けていれば必ず良い方向に向かうはず。これからもみんなで力を合わせ、無理のない範囲で地道に活動を続けていきたいですね。もちろん、この漫画連載もできるだけ長く続けて、より多くの方にこの問題を問いかけていきたいと思っています!

O.B. みなさん、ありがとうございました!続編も楽しみにしています。