ONELOVE すべての犬に愛と家族を。

special interview

エッセイスト・タレントとして活動する紫しえさん。本業の傍ら、お父様(俳優の宍戸錠さん)のマネジメントやカフェの経営も手掛けるなど多忙な日々を送る紫さんの原動力は、紫さんが「うちの息子たち」と呼ぶ4頭の愛犬たち。「息子たちとの出会いがなければ、今の私はない」という紫さんに、犬との暮らしで学んだこと、そして今後の取り組みについて教えていただきました。

―最近、とても悲しい別れがあったそうですね。

紫しえさん(以下、紫):まだ、ごく近しい方にしかお知らせしていなかったのですが、実はうちの長男・ケニー(チワワ)が先日、15歳のお誕生日を目前にして天に召されました。
晩年は病気がちで認知症も患い、最後は自力で水や食事を採ることもできなくなってしまいましたが、それでも精いっぱい生きて、天寿を全うしてくれたと思います。もちろん、ケニーとの別れは非常に悲しくてつらいことですが、できる限りの治療やケアをしてあげることができたので、「あれをやってあげればよかった」「こうすればよかった」というような後悔は全くありません。お葬式も近くのお寺で無事執り行っていただくことができました。
姿かたちはなくなりましたけど、今もケニーは私たちと一緒にいてくれているような気がしています。毎朝、ケニーの位牌に「今日も3頭の弟たち(クール、ゲバラ、カミノ)が健康に無事に過ごせるように見守ってね」って話かけているんですよ。

―ケニーが亡くなる前は、4頭の犬と一緒に暮らしていたんですよね。多頭飼いには慣れていたのですか?

紫:父(俳優の宍戸錠さん)が大変な犬好きで、幼いころから常に数頭の犬と一緒の生活を送っていました。だから、特に大変さは感じませんでしたね。

犬も人間と同じで、4頭いれば4通りの個性があります。その個性がぶつかり合うわけですから、トラブルももちろんありますし、逆にいいこともたくさんあります。例えばやんちゃだったクールが、ゲバラという弟を得たことでお兄さんっぽくふるまえるようになったり、逆にお兄さんであるケニーに甘えたり…。

犬たちを見ていると人間社会の縮図を見ているようで、とても面白いんですよ。その意味でも4頭の息子たちにはとても多くのことを教わりました。もし彼らと出会っていなかったら、今の私はいなかっただろうな…とすら思います。

―ケニーと出会ったきっかけは?

紫:約15年前、私は妊娠中に子宮頸がんを患い、授かった子供を諦めなくてはならない…という、とてもつらい状況に追い込まれていました。子供を亡くし、放射線治療を始めなくてはいけなくなって、心身共にボロボロだったときに、現実逃避がしたくて医師にお願いして外出し、映画を観に新百合ケ丘まで出かけたんです。普段なら六本木あたりまで観に行くのですが、その日は都心まで出かける気力がなくて…。新百合ヶ丘に着いて、映画館の入っているビルにいくと、ペットショップがあったので、なんとなく入ってみることに。するとそこにケニーがいて、目が合った瞬間、「おなかの中にいた私の赤ちゃんだ!」と直感。しばらくお店の方にお預けして、放射線治療がひと段落してから、無事、我が家に迎えることができました。

後に母との共著でがん闘病記「がんだってルネッサンス」という本を出す際、私は退院後に出会った一枚の絵を表紙に使うことを決めました。画家の葉祥明さんの、海を眺めている女性と仔犬の絵です。それは赤ちゃんとバトンタッチして私の元に来たケニーと私が、海に戻っていく赤ちゃんを見送っている様子のようでした。私にはそう思えてならなかったのです。

今、私が元気に暮らせているのは、あのときケニーと出会ったおかげ。ケニーがいなければ、あのつらい時期を乗り越えることは到底できませんでした。

―その後、他の3頭を迎えた経緯は?4頭の「子育て」は大変ではなかったですか?

紫:ケニーを迎えて間もなく仕事に復帰したので、外出をする機会が増えました。留守番中、ケニーが寂しいだろうなと思って迎え入れたのが、クールです。クールは伊豆の大型スーパーで売れ残ってしまい、安く売られていた犬の1頭でした。耳が大きいところがケニーによく似ていましたし、ここで出会ったのも何かのご縁だと思って、うちに迎えることにしたのです。その後、10年ほど経ってケニーがシニア期に入り、ちょっと元気がなくなってきたので、若いコと一緒に過ごすと良い刺激になるのでは…?と思って、ゲバラとカミノを迎えました。効果はてきめん!若い2頭の相手をすることでケニーも活発さを取り戻してくれました。

多頭飼いは確かに大変な面も多いので、むやみにおすすめすることはできません。でも我が家の場合は幸い主人も犬たちが大好きでよく手伝ってくれるので、今まで特に問題なく過ごせています。散歩はもちろん毎日連れていきますし、定期健診やワクチン接種も欠かしません。健康管理としつけは飼い主の責任ですよね。

―しつけに教室にも通わせたそうですね?10年以上前だと、まだそこまで犬のしつけに力を入れる飼い主さんは少なかったのでは?

紫:そうですね、多くはなかったとおもいます。ただ、私は20代のころにベルギーに留学していて、そこでしつけの大切さを実感していたので、自分の犬にも最低限のしつけはしておきたいという気持ちが強くありました。

ベルギーでは当時から犬が社会に溶け込んでいて、レストランやホテルでも当たり前のように受け入れられていたんです。それはベルギーの方々が犬を甘やかすだけでなく、ちゃんとしつけているからできること。犬との生活をより豊かに楽しくするためには、ある程度のしつけが絶対に必要です。残念ながら日本ではまだその認識を持つ飼い主さんが多くないですね。ちゃんとしつけをしていないのに、「面倒を見きれない」と言って飼育放置し、保健所に犬を持ち込んでしまう飼い主さんがいると聞いてすごくショックを受けました。

―飼育放棄を減らし、結果的に殺処分数を減らすために、何かアイディアがありますか?

紫:いろいろあると思うのですが、私が提案したいのは、ペットショップの役割を変えることです。今のように店頭に動物を陳列するのはやめて、VTRを流し、子犬だけでなく保護犬や何らかの事情で飼い主と離れて暮らさざるをえなくなった犬たちとの出会いの場にするのはどうでしょうか。VTRでは、その犬の生い立ちや今の様子、前の飼い主さんのことなどを紹介するのです。そうすればその犬の性格や特徴、前の飼い主さんとの暮らしぶりが分かった上で犬を選ぶことができますから、いざ飼い始めてから「こんなはずじゃなかった」「手におえない」などの理由で飼育放棄をするケースが減らせるのではないでしょうか。

それと、犬を飼うことを検討中の人は、実際に犬を飼っている飼い主さんに話を聞いて暮らしぶりを見せてもらうといいと思いますよ。毎日のケアや健康管理の大変さをご自身の目で見て、それでもなお「犬を飼いたい」という気持ちが揺るがないのなら、犬を迎えても大丈夫だと思います。私は犬の飼い主さんとこれから犬を飼いたい人の出会いの場として役立ててもらうために、自宅を予約制のカフェバー「CASA FIESTA」として開放しています。ご興味のある方はご予約の上、ぜひ遊びにいらしてくださいね。

CASA FIESTA http://r.gnavi.co.jp/gs72zty80000/

 

―今後、取り組んでみたいことは何ですか?

紫:今まで4頭の息子たちと暮らしてきた経験を活かして、子供たちに犬と暮らす楽しさや素晴らしさ、そして命の大切さを教える活動に取り組んでみたいと思っています。犬って人生が人間よりずっと短いでしょう?でもその短い人生を通して、私たち人間にたくさんのことを教えてくれるんですよ。例えば、私は晩年に認知症になってしまったケニーの介護を通じて、今後やってくるであろう肉親の介護に対する心構えができましたし、自分の老後にも想いを馳せて準備をしたいと思えるようになりました。今は核家族が多くて、子供たちは高齢者と接する機会が少ないでしょう?人が老いていき、介護が必要になり、そして死んでいく様を見る経験ができないと思うのです。でも犬と暮らせば、それを経験できます。そしてその犬の一生を見守ることで、命の大切さを学ぶことができるんですよね。

しえさんご自身は、これからもずっと犬と暮らし続けますか?

紫:もちろんです。犬のいない生活は考えられませんから…。とはいえ、私ももう50代。今から子犬を飼い始めると、60代、70代になったときにお散歩やケアをしっかりする体力があるかどうか、自信がありません。だから、これから新たに犬を迎える場合は、成犬の保護犬に来てほしいなと思っています。たくさんの犬を引き取ることは残念ながらできませんが、たとえ1頭でも我が家で楽しく暮らしてもらうことができたら、天国のケニーもきっと喜んでくれるはず。

それと、今、犬たちに関する新しい書籍の執筆を進めています。私はケニーを始め犬たちからたくさんのギフトをもらって生きて来たので、今後はそのご恩返しのつもりで、日本を犬たちが快適にハッピーに生きていける国にするための活動に、微力ながら取り組んでいきたいと思っています。

―紫さん、ありがとうございました!

 

紫しえ(むらさきしえ)

エッセイスト。1963年東京生まれ。83年、20世紀バレエ団附属芸術学校ムードラ(ベルギー・ブリュッセル)にて特別研究生としてモダンバレエを学ぶ。帰国後、パフォーマンス・アーティストとして活動。女優としてドラマにも出演。93年より俳優のマネージメントを始め、現在、宍戸錠事務所にて父・宍戸錠ほか俳優陣のマネージメントをするほか、エッセイストとして活動。連載エッセイ「しえの子宮頸がんから始まる新しい旅」(朝日新聞医療サイトCapital)、著書に闘病記「がんだってルネッサンス」(中央法規出版)等
http://www.officejoeshishido.com